男性に多い痔ろう
痔ろう、これ男性に多いんですか?
はっきりとした理由はわかっていないのですが女性の患者さんよりも男性の患者さんの方が3倍から5倍ほど多いという報告があります。
痔ろうは肛門周囲の細菌感染がきっかけで発症しますので、アルコール飲料の飲み過ぎやストレスで下痢をしやすい男性に多くみられます。
痔ろうはどうやって出来るのですか?
下痢をした時などに肛門の中にある小さなくぼみ便が入り込んでしまって細菌感染を引き起こします。
そうしますと、お尻の中が化膿して膿がたまることがあります。
いつまでも膿がたまったままというわけにはいきませんから膿をからだの外に出すためにお尻自然に穴が開いてトンネルのような膿の通り道が出来てしまう、このようにして痔ろうになります。
お尻に穴が開く、ほんとに痛そうですが、痔ろうの症状にはどういったものがあるんですか?
痔ろうの前段階としてお尻の中に膿がたまるのですけれども、膿がたまって炎症が起きている時はその部分が赤く腫れて強い痛みを伴います。
また37度から38度くらいの熱が出る場合もあります。
これを肛門周囲膿瘍といいます。
ただお尻に穴が開いて、つまり痔ろうができて膿をからだの外に出てしまえばこうした症状はおさまります。
代わりに痔ろうのトンネルを通って膿が出てくることがありますので、下着がベタベタと汚れるという場合があります。
ほおっておくとまた膿んで腫れて痛みます。
この痔ろう、治すにはどうしたらいいんでしょうか?
残念ながら一度痔ろうになると自然に治ることはありません。
また痔ろうを10年以上放置してしまうとまれに悪性化して「痔ろうがん」という病気になることがあります。
そのため痔ろうを完治させるために早めに受診して手術を受けていただく必要があります。
手術が必要になるということですが、どういった手術なんですか?
痔ろうの手術にはいくつかの方法がありますが基本的な考えはお尻の穴にできた膿の通り道である痔ろう、すなわちこのトンネルをすべて取り除くということになります。
もっともよく行われていますのが痔ろうの手術の基本となる切開開放術という手術法です。
切開開放術、切り開いて開け放つと書きますが、どういう方法なんでしょうか。
これは痔ろうの管に沿ってメスを入れて痔ろうから下を肛門の筋肉ごと切り開く方法です。
痔ろうの管を切り開くので切開開放術と呼ばれています。
痔ろうの手術の多くにこの切開開放術が行われています。
それ以外にはどんな方法があるんですか?
痔ろうができる場所によってはこの切開開放術を行いますと肛門括約筋というお尻の穴締めたりゆるめたりする大切な筋肉をたくさん切り取ってしまうことになります。
ですから括約筋を大きく切ってしまうとお尻の穴を締める力が弱くなってしまい便が漏れてしまうことが起こります、それじゃあ困りますよね。
この筋肉、それだけ重要なんですね。となるとかなり困りますね。
そうですね。ですからその場合には括約筋温存術という痔ろうの部分だけをくり抜くようにしてとって、出来るだけ括約筋をのこすような手術法ですとか、シートン法といって時間をかけて括約筋をゆっくりと切除する手術の方法など出来るだけ肛門の働きを損ねないような方法を選びます。
シートン法、これはどういう手術なんですか?
はい、シートンという名はひもという意味なんですけれども、シートン法はゴム紐を痔ろうの管に通して結んで、ゴムの輪っかを作ります。
このゴムが縮もうとする力を利用して3か月から半年くらいの時間をかけてゆっくりと少しずつ括約筋を切開していきます。
メスで切るのではなくてゴムで少しずつ切るというイメージです。
メスを使わずゴムの力を利用する手術なんですね。しかもかなり時間をかけて行われるんですね。
そうなんです、ゆっくり時間をかけて切ることで括約筋のダメージを小さくします。
そのため肛門の働きを損ねず、しかも再発が少なく済む方法として注目されています。
ただし、シートン法を行う場合はゴムひもの締め直しや交換のために2~3週間おきに外来にかよってもらう必要があります。
ここまで痔ろうの手術の方法について伺ったんですが、選択肢がいろいろありますね。
はい、そうですね、昔に比べていろいろな方法を行うことで肛門に機能を保てるようになってきています。
痔ろうの手術は専門的な知識、技術が必要ですので、手術件数の多い専門医で治療を受けてください。
※痔ろうに気がついたらすぐに受診して手術を検討してください。